仕込みの量を決めているのは、たいてい店長かベテランの頭の中です。それ自体は悪いことではありませんが、この判断は人に渡せませんし、その人が休むと止まります。
多く作れば捨てることになり、少なければ売らない。どちらも同じだけ損です。スマレジに残っている取引データを使って、この判断に根拠を付ける手順を書きます。
出発点は「先週の同じ曜日」
飲食店の出数は、何よりも曜日で動きます。金曜の夜と火曜の夜では客層も注文も別物です。だから「過去の平均」ではなく、同じ曜日だけを並べて平均を取るのが出発点になります。
期間は4週間くらいが扱いやすいところです。短すぎるとたまたまの1日に引っ張られ、長すぎるとメニュー改定や季節の変化についていけなくなります。
スマレジ側の準備は、取引を商品単位で見られる状態にしておくことだけです。商品登録が「ランチ」のような名前になっていると、何を何食仕込むかの判断には使えません。
素直に平均を取ると外れる4つの理由
ここが本題です。同じ曜日を並べて平均するだけだと、予想を低い側にも高い側にも引っ張る要因が混ざります。
1. 売切れた日をそのまま数えている
20食仕込んで夜8時に売り切れた日の実績は20食です。でもそれは需要が20食だったという意味ではありません。売るものがなくなっただけで、本当は25食売れたかもしれない。
この日を平均に入れると、今度は20食しか仕込まないことになり、また売り切れます。一度売り切れるとその水準から上がらなくなるので、売切れの記録がある日は平均から外すのが安全です。
2. 宴会の日が平均を持ち上げている
貸切りや1回の大口予約が入った日は、普段の3倍出ることがあります。これをそのまま平均に入れると、何もない日の仕込み量まで引き上げられます。
対処は、突出して高い日を上限で丸めることです。上位数パーセントの水準に揃えてしまえば、スパイクの影響を残しながら削れます。日ごと削除してしまうと、実際にあった売上をなかったことにしてしまいます。
3. 祝日の月曜が平常の月曜に混ざっている
ハッピーマンデーで月曜が祝日になると、その日の実績は平常の月曜と別物になります。それを月曜のサンプルに入れたままにすると、その後数週間にわたって月曜の予想を水増しします。
予想したい日が祝日でないなら、祝日だった同じ曜日は外します。逆に予想したい日が祝日なら、祝日どうしの実績のほうが参考になります。
4. 新メニューの実績を予測に使っている
出して数日のメニューは、そもそも同じ曜日のサンプルが1、2件しかありません。それで平均を取っても、根拠にならない数字が出るだけです。
一定の実績日数が溜まるまでは、予測を出さずに「データ蓄積中」として扱うのが誠実です。弱い数字を自信ありげに見せると、予測全体が信用を失います。
定休日を0食として数えない
見落としやすいのがここです。
同じ「その日の実績が0」でも、意味が2通りあります。
- 営業していたが、その品目は1つも売れなかった。これは売れなかったという事実なので、0食として平均に入れる
- その日は店が閉まっていた。これをカウントすると、定休日のある店は仕込み量が不当に下がる
問題は、品目単体のデータだけではこの2つを区別できないことです。判別には店全体を見る必要があります。その日に店で取引が1件でもあったかを営業日の判定に使えば、取引データだけで分けられます。
毎朝届く形にしないと続かない
計算式自体は表計算ソフトでも組めます。続かないのは、毎日データを落として式を更新する作業のほうです。仕込みを始めるのは開店前の一番忙しい時間で、そこでPCを開ける人はまずいません。
現実的な形は、朝の決まった時間に、品目ごとの目安が向こうから届くことです。見に行くものにすると、忙しい週に見なくなり、見なくなった週に限って当てにならなくなります。
仕込み予報でやっていること
ここまでの処理をそのまま入れたのが「仕込み予報」です。スマレジの取引を日次で取り込み、直近28日の同曜日平均を基礎に、上の4つを順に除いてから明日の品目別出数を出します。売切れ日の除外、上位95パーセンタイルでの丸め、祝日サンプルの除外、実績14日未満の品目を「データ蓄積中」にする処理も入っています。
予測はAIではなく決定論的な計算でやっています。同じデータを入れれば必ず同じ答えが出るので、なぜその数字になったかを実績で説明できます。毎朝、店が指定した時刻にメールで届きます。仕込みの要らないドリンク等は品目タブでチェックを外せば、予報から消えます。
